少子化なのに待機児童が起きる原因を「需要と供給モデル」で考える

 待機児童が問題になっている。「少子化なので入る保育園はすぐ見つかるだろう」と安易に思いがちだ。しかし、児童のいる親は保育所探しに四苦八苦している。では、待機児童問題の原因は何なのだろうか?そして、どうすればこの問題を解決できるか?これらの疑問について経済学を用いて考察する。

経済学の観点から待機児童問題を考える

 供給不足の問題を解析する際、経済学における「需要と供給」という数理モデルを用いるのが便利だ。はじめに、需要と供給モデル化について簡単に説明する。

需要と供給モデルについて

 まず、以下のグラフを見てもらいたい。このグラフはあるものの需要と供給をしめす。横軸がものの価格で、縦軸が売れるものの数量である。赤色の太線が需要をあらわし、価格が高くなると買いたい人が減る。そのため、需要曲線は右下がりの曲線になる。青色の線が供給をあらわす。価格が高くなるとたくさん売りたいので、生産量を増やす。そのため、供給曲線は右上がりの曲線になる。

需要と供給

最終的に価格は需要曲線と供給曲線の交点となる。この点は買い手と売り手の利益の総和を最大化する点でもある。

なぜ保育所が不足するのか?

 上記の需要と供給モデルを待機児童の問題に当てはめる。需要と供給曲線をかくと以下のグラフになる。黒丸が現状の位置をあらわす。

 グラフを見ると、価格が平衡点より安く、供給が需要に追いない。そのため、供給不足という問題が生じている。通常なら、価格を引き上げ供給量を伸ばすメカニズムが生じるが、このメカニズムがうまく働いていない。よって、「供給量を伸ばすメカニズムを阻害する要因が待機児童問題の根源である」と推測できる。

供給不足

供給量を制限している要因はなにか?

 供給量が上がらない原因を探るため、保育所の制度を調べてみる。保育所について調べてみると保育所には「認可保育所」と「認可外保育所」があるということがわかる[「認可保育所と認可外保育所について(All About )を参照]。つまり、厚生労働省が保育所にお墨付きを与える制度が存在しているのだ[厚生労働省のホームページを参照]。管理がいい加減な保育所ができて子供へ危害を与えないよう、国が管理するようになったのだ。

 では、国に認可されるといいことがあるのだろうか?答えはイエスで、認可されることにより保育所に補助金が支給されるという利点がある[東京大学ホームページ参照]。認可保育所では補助金により保育料が月額2-4万円が相場で、認可外保育所では月額10-15万円になったりする。これだけ価格に差があると、認可保育所へ入る以外の選択肢はなさそうだ。しかし、認可保育所には限りがあるため、供給不足つまり待機児童の問題が生じる。上記をまとめると、「保育所の供給量は国の補助金により決定され、供給量を上げる市場メカニズムが起こらない」ということになる。

待機児童問題を解決するにはどうしたらいいか?

 以上の議論で待機児童問題の原因は「政府による保育園の供給量制御にある」と把握できた。ではこの問題を解決するにはどうしたらいいかを考えてみる。

解決方法1:補助金を増やす

 解決策の一つとしては、単純に補助金を増やすという方法がある。補助金が増えると、認可保育所の利益を上がる。その結果、認可保育所を経営したい人が増えて、保育所の数が増加する。これにより待機児童問題が解決される。

 この解決策のメリットは、制度を変えないで簡単にできる点だ。税金を投入すればいいだけの話である。しかし、税負担が大きくなるというデメリットがある。

 この方法は地方自治体で採用されており、地方によって保育料に差がでる要因になっている[保育料の平均値は月2万〜3万円!世帯収入と自治体で大きな差より]。

解決方法2:補助金制度をやめて市場メカニズムがはたらくようにする

 二つ目の解決策は、記事のはじめに述べた「需要と供給モデル」がきちんとはたらくようにする方法だ。具体的には補助金制度の廃止である。

 補助金制度がなくなるとどうなるか考える。まず、補助金制度を廃止すると認可保育園がなくなり、認可保育園と非認可保育園の差がなくなる。つまり、月額保育料が10-15万円になる。そして、価格が上がり需要が下がるため、供給不足が改善される。

供給不足の改善

 これだけ聞くと「価格が高くなって子供が預けられなくなるだけじゃないか」と批判される。その指摘は正しく、補助金の分だけ損することになる。

 しかし、多様な保育園ができ選択肢も増えるという利点がある。低コストの保育園、高くてサービスや安全性重視の保育園などだ。もしかしたら想像を超えた保育園が出てくる可能性がある。また、無駄も大幅に減るだろう。

 ただ、これではあまりに子供を持つ親への経済的な負担が多くなり大変だ。とても月10万円など払えない。そこで、この場合の対処法を一つあげる(この対処法がいいかはわからないが)。対処法としては「保育園へ子供を預けた場合、一定額を支給する方法」がある。これなら、保育園へ子供を預けた親に対し平等に支援することができる。また、親から保育園へフィードバックがかかり、保育園サービスの質を低下させることもない。

私たちは何をすればいいか?

 結局、待機児童などの問題が生じるのは国の制度に原因があるのだが、文句をいっていても何の利益もない。そこで最後に、「現状の制度で私たちが子供を持った際に、どうやって私たちの利益を最大化できるか」について考察して終わる。

 私たちの選択肢としては「認可保育所」か「認可外保育所」へ子供を預けるということになる。この選択肢は当たり前だが、「認可保育所」を選ぶことになる。税金が投入されているので、この選択肢がもっとも税の恩恵を受けることができるからだ。

決定権力者のお気に入りになる

 では、認可保育所へ入る方法について考える。認可保育所へ入るには、認可保育所が私たちを受け入れるようにする必要がある。そのためには、認可保育所へ入る決定権を持つ人(決定権力者)に気に入られる必要がある。決定権力者へ媚を売って認可保育所へ入れてもらうのだ。

年収を減らす

 認可を決める際、年収が低い世帯を優先するということは十分ありうる。実際に調べて見ると、年収が低いと補助額が高くなる[保育料の平均値は月2万〜3万円!世帯収入と自治体で大きな差より]。そこで、年収を減らすような措置も有効な策である。例えば、

  1. 仕事の量を減らす
  2. 共働きの場合、離婚して夫婦の年収を下げる

などがある。前者の場合は、単に仕事の量を減らすことで年収を下げる。つまり、お金でなく自分の時間を増やす措置をとる方法だ。空いた時間に子育てに集中するのもいいと思う。

 後者は単純に離婚により世帯の収入を下げる。専業主婦の場合、所得がないので保育料をおさえることができる[母子家庭の場合の保育料より]。

 保育料節約のために、決定権力者にこびをうったり離婚するといった一見アホらしい方法だが、実際に実行する強者は存在するからおもしろい。以下、引用。

その後、自分に娘が生まれるということが分かってから保育園についていろいろと聞いていると、待機児童問題が本当にひどいですよね。入園させるために市役所の人と仲良くなったり、離婚してひとり親になって入園条件の点数を上げたり、そんなことまでやっている人もいる。めちゃくちゃですよね。これはひどいなと思って。[【どわんご保育園】川上量生・ドワンゴ会長が社内保育施設を作った理由より]。

やはり、世の中には合理的に動く人は存在するということだろう。

最後に

 ここでは「需要と供給モデル」という経済学における単純な数理モデルを用いて議論した。もちろん、需要と供給モデルほど経済は単純でなく複雑だ。しかし、無駄を切り落とし単純化することが理論の真骨頂であり、応用上も便利なのだ。もののやりとりで問題が起きた際は、需要と供給モデルを使うことで原因が見つかる場合が多々ある。機会があったら、試してみてはどうだろうか?

著者:安井 真人(やすい まさと)