PTENの正電荷が膜局在に与える影響の解析

論文がパブリッシュされました。
【阪大紹介文】
http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/newinfo/info81.html
【PLoS Comp Biol】
http://www.ploscompbiol.org/article/info:doi/10.1371/journal.pcbi.1003817

解説

PTENという分子は、ガン抑制遺伝子として知られており細胞膜とのつき方で細胞が癌化することが知られています。そして、PTENの膜局在にはPTEN表面の正電荷が、細胞膜の負電荷を利用して結合するといわれています。

そこで、今回の研究では、PTENの表面電荷が膜局在に与える影響を一分子計測(全反射によりカバーガラス付近の蛍光分子のみを光らせ一分子レベルで可視化できる技術)を使用して調べました。

その結果、PTENの正電荷が減少するに従い膜との結合が弱まることがわかりました。また、正電荷がほどほどだと、PTENが細胞膜上をホップするという奇妙な現象が観測されました。

このホップという現象を定量的に示すために、分子が膜から離れた後に戻ってくる確率を計算する手法を開発しました。安易に、輝点が消えて再び近くに現れた ら同一分子とみなせば、簡単に戻ってくる確率を計算できそうです。しかし、もしかしたら分子が膜から外れて、別の分子が近くの現れる可能性もあります。で すから、消えた輝点の付近に現れた分子が同一か別の分子かを見極める必要があります。

そこでどうしたかというと、
「異なる分子なら、消えた位置と時間に無関係である」
ということを使いました。つまり、消えた分子と異なる分子なら、ランダムに膜上に現れることを仮定しました。

すると、
【観測された確率】=【同一分子の確率】+【異なる分子の確率】
で、【観測された確率】と【異なる分子の確率】がわかるので、同一分子が膜からはずれて戻ってくる確率が計算できるのです。

そして、この解析方法を使用したら、野生型のPTENでも8%ほど膜から外れて戻ってくることがわかりました。細胞内で戻ってくる確率を計算したのはこの 研究が初めてです。また、正電荷が多いとホップの状態をPTENがとりにくく膜から外れにくいということもわかりました。

今回の解析法は、PTENにかぎらず他の分子一般に使用できる手法です。他の種類で同様の解析をすれば、面白いことがわかるかもしれません。

 

著者:安井 真人(やすい まさと)